トレーニングや健康的なカラダづくりには、栄養素を意識した食事が大切です。筋肉の原料となるたんぱく質を多く摂取するなど食事に気を付けるだけで、トレーニングの効果を高めることができます。また、さらに効果を高めるためには食事をとるタイミングも重要です。そこで今回は、筋トレ効果を高めるのに役立つ栄養素や食事のとり方、おすすめのメニュー例などをまとめて紹介します。
筋トレに食事は必要不可欠
ダイエットのために食事を抜いてトレーニングしたいと考える人がいますが、いくらトレーニングを行っていても全く食事をとっていなければ筋肉は増えません。体に必要な栄養素が不足した状態でトレーニングや運動を行っていると、必要なエネルギーを補うために筋肉が分解されてしまうからです。これではいくら運動を頑張っても、思うような効果は得られません。
また、脂肪を減らすために糖質や炭水化物を抜いてたんぱく質ばかり摂ろうとする人もいますが、これも間違いです。炭水化物を極端に減らすことで筋肉が減ると、基礎代謝が低下して「むしろ太りやすい体になってしまった」なんてこともよくあります。
つまり健康的なカラダをつくるには、運動と食事の関係を正しく理解することが必要不可欠です。トレーニングの前後に必要な栄養素を摂取して、効果的に筋トレを行いましょう。
筋トレ効果を高める栄養素
トレーニングの効果を高めるには、筋肉を増やしたり筋肉の働きに関わる栄養素をバランスよく摂取することが大切です。ここでは、筋肉を増やすために必要な栄養素とその役割、1日に摂取したい目安量などを紹介します。
たんぱく質
人の体の約20%はたんぱく質からできていて、筋肉や内臓、皮膚、爪、髪などを作るのに使われています 。また、人体のたんぱく質は20種類のアミノ酸で構成されていて、このうちの11種類は体内で合成することができる「非必須アミノ酸」と呼ばれるものです。残りの9種類は体内で合成することができないため食事で摂取する必要があります。これが「必須アミノ酸」です。この必須アミノ酸が筋肉を作るために必要なたんぱく質の原料となります。つまり筋力アップのためには、必須アミノ酸を多く含んだたんぱく質の摂取が大切です。
<たんぱく質を多く含む食材>
肉類、魚介類、卵類、大豆製品、乳製品
(おすすめ食品)
豚肉(ひれ、もも)、鶏肉(むね、ささみ、もも)、牛肉(かた、もも、ひれ)、いわしやあじの干物、まぐろやかつおなどの赤身魚、さけ、さば、豆腐、ヨーグルト、刺身のたたき
<1日に摂取したい目安量>
一般の人が必要とするたんぱく質の量は、体重1kgあたり約0.8gと言われています。ダイエット中や筋トレ効果を高めたい場合であれば、体重1kg当たり約1.2g~1.6g程度が理想的でしょう。体重50kgの人であれば、1日に摂取したいたんぱく質の目安は60g~80g程度ということになります。
脂質
脂質は摂取すると太ってしまうイメージがありますが、私たちのエネルギー源として働く大切な栄養素です。また、筋肉に必要な脂溶性ビタミンの吸収を助ける働きもあります。脂質は筋肉を肥大させるうえで必要となるホルモンの材料にもなるため、不足するとホルモン値が下がって筋肥大効果が落ちてしまいます。そのため、筋トレ効果を高めるには脂質も必要です。
ただし、脂質であればなんでもいいというわけではありません。動物性脂肪に多く含まれる飽和脂肪酸は血液中の中性脂肪やコレステロールを増加させます。逆に植物性脂肪に多く含まれる不飽和脂肪酸には、血行促進や血中コレステロールを減らす働きがあります。そのため、脂質を摂取する際には不飽和脂肪酸量が豊富な食品が推奨されています。
<良質な脂質を多く含む食材>
卵、魚、クルミ、アボカド、チーズ、オリーブオイル
<1日に摂取したい目安量>
炭水化物やタンパク質のカロリーが1gあたり4kcalであるのに対して、脂質は1gあたり9kcalです。他の栄養素よりgあたりのカロリーが倍以上高いため、たとえ良質な脂質であっても脂質の過剰摂取は厳禁です。
1日の脂質摂取量の目安は、成人が食事で摂取するカロリーのうちの約20~30%(g)。1日2500kcal摂取する男性で約56~83g、2000kcal摂取する女性で約44~67g程度という計算になります。
炭水化物(おもに糖質)
トレーニングでは、筋肉を動かすエネルギー源として糖質が消費されます。炭水化物(糖質)が足りないとエネルギー源が不足し、それを補うためにカラダが筋肉を分解してしまいます。せっかく筋トレしていても炭水化物を摂取していないと筋肉量を減らすことになるので、トレーニング中・ダイエット中でも炭水化物は適度にとることが大切です。
<炭水化物(糖質)を多く含む食材>
飯・パン・麺類などの穀類、芋などのでんぷん類
<1日に摂取したい目安量>
一日に必要な糖質の量は、男女ともに食事から摂取するエネルギーの50~65%(g)。1日2500kcal摂取する男性で約312~406g、2000kcal摂取する女性で約250~325gの炭水化物(糖質)を摂取すると理想に近づくでしょう。
ビタミン
これらの栄養素と一緒に摂取したいのがビタミン。エネルギーを生み出す栄養素である糖質や脂質、タンパク質の吸収を良くする働きを持つ栄養素です。そのために必要な量はわずかですがビタミンの多くは体内では生成することができないため、食品から摂取する必要があります。
食品に含まれているビタミンは全部で13種類で、それぞれ違う役割を持ちます。なかでもトレーニングしている人やダイエット中の人に適しているのは、 エネルギーの生成や代謝に関わる「ビタミンB1」「ビタミンB2」「ビタミンB6」「ビタミンB12」「パントテン酸」などです。
<ビタミンを多く含む食品>
(ビタミンB1)豚肉、うなぎ、紅鮭、玄米、発芽玄米
(ビタミンB2)レバー、うなぎ、ブリ、納豆、牛乳
(ビタミンB6)豚ヒレ肉、びんながまぐろ、バナナ、玄米、サツマイモ
(ビタミンB12)魚貝類、レバーなどの動物性食品
(パントテン酸)レバー、鶏むね肉、納豆、玄米、アボカド
筋トレ効果を高める食事のタイミング
トレーニングの効果を高めるためには、筋肥大に必要な栄養素を効率良く摂取することが大切だということがわかりました。それらを摂取する食事はどのタイミングでとるのがベストなのか気になる人もいるでしょう。ここでは筋トレの効果を高めるためにおすすめの食事のタイミングを紹介します。
筋トレのベストタイミングは食後2~3時間後
トレーニング前の食事とトレーニング後の食事には、どちらもメリットデメリットがあります。たとえば食事の前にトレーニングを行う場合、交感神経の働きが活発になり新陳代謝が上がりやすいのがメリットです。しかしエネルギー不足が原因で筋肉が破壊されやすいというデメリットもあります。
一方、食後にトレーニングを行う場合は筋肉に栄養が吸収されやすく、食事で摂取した糖質が運動エネルギーに変換されるためダイエットにも効果的です。ただし消化活動に負担をかける可能性があるので注意が必要です。
それぞれのメリット、デメリットを考慮したうえで私がおすすめしているのは、食後2~3時間後にトレーニングを行うことです。前述した通り、食後は血液が消化吸収に使われるため体内のエネルギーを効率よく使うことができません。しかし食後から筋トレまでの時間があきすぎると、今度は体内のエネルギーが不足して筋トレの効果が薄くなってしまいます。そのため、体内の消化活動が完了する「食後2~3時間」が、筋トレを行うベストなタイミングと言えるのです。
たんぱく質の摂取はトレーニング直後がおすすめ
エネルギーや栄養素を多く消費した運動直後は、筋肉中のエネルギー源を回復するためたんぱく質などの栄養素を吸収しやすい状態になります。また、筋肉の合成作用が最も高まるのは筋トレ後1〜2時間の間と言われており、このタイミングで体内に筋肉の原料となるタンパク質があると筋肉の修復がスムーズに進んで、筋肉づくりや疲労回復につながります。ですから、この時間までにタンパク質を摂取して体に吸収させておくことが大切です。
たんぱく質は魚や肉などの食事で摂取するのが理想的ですが、すぐに食事ができない場合はプロテインや豆乳、牛乳、ヨーグルトドリンクなどたんぱく質を多く含む飲み物で摂取するのもおすすめです。
筋トレ効果を高める食事のポイント
摂取するタイミング以外にも、普段の生活で意識したい食事のポイントをまとめます。
栄養のバランスに気をつける
食事メニューは栄養バランスを意識することが大切です。効率良く筋肉を肥大化させるために必要なたんぱく質や炭水化物(糖質)、脂質、ビタミンといった栄養素をバランス良く摂取できる食事メニューを心がけましょう。また、特定の食品・栄養を摂りすぎると腸内環境が乱れる原因になるので、さまざまな食品からバランス良く栄養を摂取できるように工夫しましょう。
朝・昼・晩の3食しっかり食べる
ボディメイクのために食事を抜こうと考える人も多いですが、筋トレ中は朝・昼・晩の3食をきちんと食べることをおすすめします。食事を抜くと空腹を感じる時間が長くなりすぎて、食事をしたときに血糖値が上昇してインスリンが大量に分泌されます。インスリンには糖質を脂肪にして体に溜め込む働きがあるため、食事を抜くとかえって太ってしまう可能性もあるので注意が必要です。
夜遅い時間に食事をとらない
夜遅い時間に食事をとると、消費されなかった余分なエネルギーが脂肪になりやすいので注意が必要です。また、消化活動により睡眠が妨げられることもあります。翌朝に食欲が湧かず朝食が食べられないなど生活リズムの乱れにもつながるため、夕食は遅くとも寝る3時間前までに済ませるようにしましょう。
カロリーのとりすぎに注意する
筋トレにはエネルギーを多く使いますが、消費しきれないエネルギーは体脂肪としてカラダに蓄積されます。糖質や脂質が多い食材は高カロリーになりやすいので、消費カロリーと摂取カロリーのバランスを意識して食事メニューを考えましょう。
筋トレ効果を高めるおすすめ食事メニュー
ここまで筋トレ効果を高める食事のポイントについて解説してきましたが、具体的にどのようなものを食べればいいのか、食事メニューが思い浮かばない人も多いでしょう。そこで最後に、筋トレ効果を高めるためにおすすめの食事メニューの実例をいくつか紹介します。
朝食におすすめの食事メニュー
<パターン1>
玄米
焼き魚
豆腐の味噌汁
納豆
<パターン2>
オートミール
野菜スープ
ハムエッグ
サラダ
朝食はたんぱく質が少なくなりがちなので、筋トレ効果を高めるためには朝食からたんぱく質を意識して摂取することが大切です。魚や肉、卵、大豆は良質なたんぱく質が豊富に含まれているので、焼き魚や卵焼き、納豆などがおすすめです。牛乳を飲むのも効果的です。
昼食におすすめのメニュー
<パターン1>
生姜焼き
白米
ワカメの味噌汁
<パターン2>
マグロとアボカドのポキ丼
昼食はできるだけ定食メニューを選ぶと、外でも比較的簡単にバランスのとれた食事を摂ることができます。肉や刺身などがのった丼ものは、炭水化物に加えて糖質やたんぱく質も摂取できるのでおすすめ。うどんやそばなどの麺類を食べる場合は、具材が多いものを選ぶと不足しがちな栄養素を補うことができます。
夕食におすすめのメニュー
<パターン1>
冷しゃぶサラダ
きのこスープ
<パターン2>
ささみのりチーズ
サラダ
野菜のあんかけスープ
前述した通り、寝るまでに消費されなかった余分なエネルギーは脂肪になりやすいので夕食はできるだけ早く済ませることが大切です。また、代謝が下がり消化酵素の働きも悪くなるので夜は軽めの食事を心がけましょう。たんぱく質の摂取は夜も意識したいので、魚や豆腐などの低脂肪のタンパク質+野菜のおかずなどで栄養素を補給するのもおすすめです。
間食するなら低脂質&高たんぱくな食品を!
バナナ
ナッツ
ギリシャヨーグルト
プロテインバー
筋トレの前後に空腹感を感じたときは間食するのもOKです。エネルギーが不足するとエネルギーを作り出すために筋肉が分解されてしまうので、筋トレ中や筋トレ前後の間食はトレーニングの効果を高めてくれる可能性もあります。ただし糖質や脂質が多い高カロリーなお菓子はできる限り避けましょう。間食も低脂質で高たんぱくな食品がおすすめです。バナナやナッツはビタミンが豊富なので栄養補給にも最適です。
せっかくトレーニングするなら、摂取する栄養素や食事に気をつけて効率よくボディメイクしたいですよね。タイガージムでは体成分の分析と健康診断等の血液検査を評価して、適切な運動と食事管理のアドバイスも行っています。トレーニングと共に食生活を見直して、理想のカラダを目指しましょう!
この記事を監修したのは…
田中和寿さん
サッカー Jリーグ 「横浜マリノス」に30年間在籍。アスリートの育成やトレーニングに携わる。マリノス退団後は、プロゴルファーを中心にツアー帯同やパーソナルサポートをしながら、順天堂大学・小林弘幸教授の自律神経や呼吸に関する研究グループに在籍。視覚刺激における運動機能改善などの研究を行う。鍼灸按摩マッサージ指圧師や柔道整復師、アスリートヨガ、ピラティスインスティテュートなど数々の国家資格や認定資格を保有。現在はタイガージムのトレーニングの監修を行っている。